ウイルス病の最新動向−豚の業界ではたくさんのことが起こっている
(Pig
Progress; A viral update ?lots going on in the swine world
養豚業界ではここ最近、インフルエンザやPRRS、サーコウイルスなど様々なウイルス感染が起こっています。そこで、一度全体像を振り返ったほうが皆さんにとって分かりやすいと思います。
カッコー(馬鹿者)の巣から飛び出たインフルエンザ
私は人間のインフルエンザウイルス(H1N1)が、たとえ豚と鳥由来の遺伝子が混じっているとしても、「メキシコインフルエンザ」または「北米インフルエンザ」ではなく「豚インフルエンザ」として扱われ、豚の取引や世界中の豚肉消費に混乱をきたしていることに驚いています。馬鹿なメディアはこの多くの間違いを訂正しなければなりません。私は初期に報告された高い死亡率と、鳥インフルエンザの株(H5N1)と違って人から人への感染がすでに起こっていたことから、鳥インフルエンザよりも深刻だとロータリー会議では思っていました。
幸運なことに、このウイルスは感染性が高いですが病原性は今のところ高くなく、メキシコで感染がかなり広まってから明らかになっていることからこのウイルスはおそらくメキシコでしばらく前に発生したと考えられています。この新しい株ができるには、人間と豚のインフルエンザウイルスが豚または人の一つの細胞内で出会わなければなりません。今回はたぶん人間だと思われます。人間と豚で認められるサブタイプのNとHは普通よく似ていて(表1の●)鳥由来のサブタイプとはかなり違うことが多いです。ですから豚と人間との接触が重要なのであって、豚の頭数が多くて高密度で飼育しているが人間との接触は少ないという状況より、アジアにおけるインフルエンザの流行のほうが危険性はより高いと考えられます。
表1.A型インフルエンザの表面抗原(Defra,
2005)
興味深いことに、イギリスのインフルエンザの専門家は次の大流行はトリのサブタイプではなくH1〜3、N1〜2型のウイルスで起こると予想しています。当るでしょうか?
高病原性のPRRSはアジアの問題か?
飛行機の乗客によりインフルエンザウイルスが世界中に広まったことから、感染が簡単に拡大することがわかりました。種畜や精液の移動は最も感染を大陸間で移動させる危険がありますが、幸運なことに中国で認められた「高熱病」を起こす高病原性のPRRSはヨーロッパや北米に広がらず、他のアジア地域に広がっているようです。豚の移動がアジアから流出するよりも流入する方が多いのは幸運なことですが、サーベイランスと輸入のコントロールや警戒が重要です。
サーコウイルスのワクチンの間違い
ここ最近、アテネとリスボン、シンガポールで大規模なミーティングが行われ、母豚用ワクチン(メリアル、サーコバック)とヨーロッパで発売された新しい子豚用ワクチン(インターベット、ポーシリスPCV)、そしてアジアで発売され続けているベーリンガーのインゲルバックサーコフレックスのそれぞれの報告を受けました。このワクチンの成功には疑いはなく、米国の90%の子豚にワクチンが使われ、その他の国々でワクチンが不足するという事態になりました。この状況は少しずつ改善され、やがて新しい生産体制が整うでしょう。
まだ母豚にワクチンをするか子豚に使うかという二つの意見がありますが、どちらも有効のようです。母豚へのワクチンは明らかに主豚を守ってくれますし、またその子豚もウイルスから守ります。母豚由来の抗体は育成段階のある期間までは子豚を守ってくれますが、いつまでかははっきりとは分かりません。移行抗体があるとウイルスからの攻撃を中和され、もしウイルス血症が早い時期に起こる場合、発症することなく免疫を獲得させることができるでしょう。
特に肥育舎など、ウイルス血症が遅く起こる場合にはこの防御は十分ではない場合があります。子豚用ワクチンは育成期間(ワクチン接種2週間後)から肥育期間も十分な防御効果を発揮します。これらの内容は最近の英国の獣医師らの調査によっても確認され、母豚と子豚のワクチンは育成期間の子豚には同様の防御力を与えたが、母豚は生存産子数が増加し、子豚用ワクチンでは肥育期間の防御力が大きく勝っていました(表2)。
表2.英国の獣医師たちによる母豚と子豚用ワクチンの改善結果の比較
米国養豚獣医師協会の最近のミーティングでは母豚用ワクチンを子豚に、また子豚用ワクチンを母豚に使用するなど様々なプログラムが紹介されました。子豚へのワクチンの投与を早める(7日齢以下)、一回打ちと二回打ちのプログラム、ワクチンによる移行抗体の影響なども紹介されましたが、最後には情報がほとんど混乱しているということが明らかになりました。
私はこれには基本的なルールを当てはめればよいと考えています。もし母豚にワクチンを打って免疫を高めていた場合、移行抗体が子豚の早い時期のワクチンに干渉するのは驚くべきことではありません。この場合はワクチンを打つのをできる限り遅く、少なくとも離乳までは遅らせます。一回打ちか二回打ちかは米国とヨーロッパで歴然とした違いがあります。これは農場の規模を反映しているようで、米国ではコンプライアンスが問題だと報告されています。ヨーロッパでは農場が小さい傾向にあり、ワクチンのコストや投与が一回打ちを選択する要因になっています。
ウイルス性の感染症は豚の生産に重要な役割を果たしており、破壊的な効果ももたらします。我々は過去10年間にわたってPCV2と戦い、ほぼ制圧に至りましたが、まだPRRSに直面しています。我々にはまだまだ課題が残されており、メディアが「メキシコインフルエンザ」で我々を攻撃するのはフェアではないと思います。
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