rssPCV2 のワクチンプログラムは変化している-パート4.ワクチンの混合では何に気を付けるべきか? 米国での実際.

//17 Aug 2010

PCV2 vaccination changing  the pig industry - Part 4. What should be considered when mixing vaccines? Experiences in the US market

 

ワクチネーションは感染症による経済的被害を防ぐための効果的な方法である。北米ではマイコプラズマとPCV2を予防するためにワクチンを混合することが一般的となりつつある。本文では実践するにあたって気を付けなければならないワクチンの取り扱いや準備、溶解法について焦点をあてる。

By Dr Tom Gillespie, Rensselaer Swine Services, USA

 

病気を起こす病原体に対するワクチンは、獣医師や生産者が豚群の健康を維持するためのとても重要な道具である。 疫学とは豚群の健康や病気に影響する因子、病気の原因から伝播、コントロールなどを調べることである。適切なワクチンプログラムを効果的に実施するためには対象となるであろう病原体の基本的な事を理解していなければならない。基本的なワクチネーションの目的には3つの側面がある:

1)家畜の個体を感染症の影響(死亡率や発症率、長期的な経済的影響)から守るため、2)家畜の群れにおける病気の流行を防いで経済的な損害を減らすため、3)最終的には主要な病原体を撲滅するためで、オーエスキー病のワクチネーションなどは経済的な被害を防ぐための安全でとても効果的な方法である。しかしながら、効果的なワクチネーションは以下の項目に左右される: それぞれのワクチンの取り扱いと保存法、使用前の準備、投与方法である。

 

ワクチンの取り扱いと保存

 たとえ最新の技術で作られたワクチンでも不適切な取り扱いや保存の質疑によって悪影響を受けるので、それぞれのワクチンの取り扱いにおける基本的なルールに注意しなければならない。ワクチンには保存期間と有効期限が決められていて、それぞれの製品の包装に分かりやすく記載されている。有効期限はワクチンが適切な方法で保存されていたかによっても変わる。これには輸送中の温度(冷蔵便など)も含まれ、製品の保存期間すべての影響を受ける。
 冷蔵輸送期間中に不適切な温度変化があるとワクチンの効果が減少する事があり、ワクチンの失敗の原因となる。多くのワクチンは28℃の範囲内で保存しなければならない。多くのワクチンは温度感受性で、推奨温度よりも高温下におかれると劣化する。氷点下のような極端な温度も同様に劣化を引き起こす。ワクチンによっては直射日光の影響もうけるものがあり、通常は遮光のガラス瓶が使われて直射日光をさけて保存する指示がある。

 

ワクチンの準備

 フリーズドライの乾燥ワクチンが数年前から一般的に使われるようになった。ワクチンのボトルに溶解液を注入するための穿刺器(クイッカー)も販売されている。注意しなければならない事は、注射用の製品を扱うためには滅菌された器具のみを使用すべきとい言う事である。最近では豚用の‘混合できる’ワクチンが販売されている。インゲルバック サーコフレックスとインゲルバック マイコフレックス(どちらもベーリンガーインゲルハイム社製)が混合できるものとして認可(2008年より米国、カナダ、メキシコで認可)されている製品の例である。ワクチンを混合する目的は、特に離乳期間における家畜のワクチネーションによるストレスを減らすためである。加えて、生産者にとっては労働力が軽減できる事で喜ばれている。

  それぞれの製品には投与方法、注射部位、使用時期、残留時間などのワクチンの使用上の基本的な説明が添付されている。ワクチンは製造元が推奨し、適切な混合のガイドラインが提供されていない限りは混合して使用するべきではない。常にラベルに書かれた二種類のワクチンの混合に関する使用方法を確認するべきである。抗原とアジュバンドは開発段階で念入りに選択されたものであり、ワクチンで適切な免疫力を持たせるためには非常に重要なポイントである。

 基本的なルールとして、異なったアジュバンドのワクチンの混合は避けるべきである。異なったアジュバンドのワクチンを不適切に混合するとワクチンの効果や安全性の欠落につながり、また少なくともワクチンが期待通りの効果を発揮しない原因の一つとなる。

 ワクチンを溶解もしくは混合後する時、使用にあたって適切な量か確認しなければならない。開封後のワクチンは細菌による交差汚染を避けるため、速やかに使い切ってしまわなければならない。 汚染されたワクチンは期待とは逆の反応を起こし、まれに死亡事故にもつながる。この事が、製造元が開封後のワクチンをすぐに使い切るように推奨する理由である。

ワクチンの混合
二種類の混合用ワクチンと混合用の倍量サイズのボトル、穿刺器

一番目の混合用ワクチンを混合用ボトルに充てんする

二番目の混合用ワクチンを混合用ボトルに充てんする。
混合用ボトルも標準のボトル用シリンジで使用できる。
 

 混合に際する6つのルール

1.   ワクチンの製造元が推奨していない限り混合しない。

2.   ワクチンのラベルや使用方法の説明をよく読むこと。

3.   異なったアジュバンドのワクチンは混合しない。

4.   混合できるワクチンを使う時には適切なドーズ(使用量)である事を確認する。

5.   ワクチンを混合する際には滅菌した器具を使用する。

6.   混合するときにはボトルの中身のすべてを使用し、速やかに使い切ること。

表1.筋肉内注射と皮下注射に使用する注射針    
  筋注用注射針  皮下注用注射針 
  豚の大きさ  長さ ゲージ   長さ ゲージ 
  種豚  3.8cm  16-18G  2.5cm  16-18G
   27-113kg 2.5cm  16-18G  1.9cm  16-18G 
  4.5-27kg  1.6-1.9cm  18G  1.3-1.9cm  18G 
  4.5kg以下  1.3-1.6cm   20G 1.3cm   20G






注射方法

豚に使用するワクチンのほとんどが筋肉内注射で投与される。若い豚では一回の投与量が2ml以下であるべきである。ワクチンによっては筋肉内だけでなく、皮下注射でも使用できるものもある。注射針は鋭いものだけを使用し、注射中に曲がるようなものを使用してはならない。針の太さは豚の体格によって決める。適切な針の太さのガイドラインを表1に示す。

 針が折れて注射部位に残ってしまった場合、できるだけ早く針を取りだすようにしなければならない。もし針が取り出されなかった場合、その豚と残留部位がと畜時に分かるようにしておかなければならない。ワクチンの接種後の注射器は外側をブラシで石鹸と温水で洗浄する。注射器の内側は温水のみで繰り返し洗浄し、乾燥させる。注射器の内側の洗浄に消毒薬を使用すると、その後に使用するワクチンに影響する。消毒薬はワクチンを中和したり注射器のパーツを痛めたりする原因にもなる。注射器や部品は清潔で乾燥したところに保管しなければならない。再利用する注射針や穿刺器は煮沸消毒、またはオートクレーブで滅菌する。ワクチンでいい結果を得るためには健康な動物だけに使用することに留意する。病気の動物は病気によるストレスのため、どんなワクチンに対しても適切な反応を示さない。

 ワクチンの適切な使用が成功へのカギであり、つまり成績の改善につながる。適切なワクチンの混合は動物へのストレスを軽減し、ワクチンを接種するために必要な労働力の軽減にもつながり、より一般的になりつつある。



図2.筋肉内注射の投与部位は適切に













                                        戻る