養豚衛生特集

豚赤痢の撲滅−投薬プログラム

(PigSite Articles 2009. April by David Burch)

今こそ豚赤痢の撲滅に取り掛かるべき時であるとデビットバーチ獣医師は語る

 

 一年の中で、春になると豚赤痢について考え始めるようになり、この夏に農場からの撲滅を試みるべきだと思います。BPEX20軒以上の農場での豚赤痢の発生を受けて西アングリア地方の農家や獣医師、運送業者、飼料生産者に独自の豚赤痢契約にサインするよう求めているが、英国のすべての養豚業者や子豚の販売者が農場からの撲滅について考えるべき時ではないでしょうか。

 病原体であるブラキスパイラ ハイオディセンテリアエは乾燥と熱に弱く、冬場ではスラリーや堆肥中で60日間生存するのに対して夏場はわずか数週間しか持たず、完全に撲滅できる可能性が高まるので夏場こそが撲滅に最適な時期だと考えられています。しかしながら過去2年間の8月の天候が恐ろしく悪く、投薬プログラムを次のように変更する時期を待たなければなりませんでした。

 

基本的なプログラムは3つのステージに分けられます。

1.清掃:農場の周りから全ての堆肥やねずみの棲み家になりそうなガラクタを取り除きます。ネズミは特に病原体を運搬するのでネズミ退治を始めます。ハエも足に付いた汚染物を広めるのでハエのコントロールプログラムも始めます。理想的には病気になったものや高齢の種豚を廃棄し、また授乳中の子豚以外の育成豚を他の場所に移すことが望まれます。こうすることで農場の掃除、床や建物の修理、そしてより良い洗浄と消毒のチャンスが得られます。再感染することが無いようにバイオセキュリティーを改善します。

2.投薬:普通投薬を始める前に糞便のサンプルを取って株を分離し、さまざまな抗生物質に対する病原体の感受性をテストします。疾病コントロールにひとつの製品を選択するだけで成功を治めている例がよくあるので、知っておくといいと思います。最初の投薬プログラムは普通2週間のチアムリンまたはバルネムリン(Novartis社のデナガードまたはエコノア)の高濃度な飼料添加で始め、家畜から病原体を撲滅し、その次の2週間は中程度の濃度でまだ感染しているものの治療と再感染の防止を行います。その後の4週間は予防レベルの低濃度で、農場の掃除と消毒で100%環境から排除できなかったものによる再感染を防ぐための投薬を行います。これらのプログラムは農場の環境によって変更することができます(図.1)。

3.観察期間:農場から豚赤痢が撲滅できたか確認するために、さらにそこから6ヶ月間の豚とその後の産子をモニターします。念のため、下痢をしている豚のスワブを常にチェックします。バイオセキュリティーのマニュアルを実行できているか観察します。

 ここ数年間でさまざまなプログラムが紹介されました。最初のものは母豚700頭の離乳子豚の生産者で、よかった事はこの農場には育成豚がいなかった事です。このケースでは施設を徹底的に掃除するのが難しく、バイオセキュリティーも限られたものでした。そこで母豚に修正プログラム(高濃度の投薬を4週間、次に中程度の投薬を4週間)が施され、子豚には「清浄」な子豚が生産されるまで4週齢まで毎週チアムリンの注射を行いました。最初のプログラムに対して増加した治療コストは母豚1頭当たり約10から15ポンドでした。

 

 二番目のケースでは母豚1000頭の野外飼育で、育成と肥育は別飼いにしている農場で修正プログラムを適用しました。そこでは母豚に最初に発生し、育成舎では発生が始まったばかりで、感染が数ヶ月間にわたって発生していることと、すでに感染の広がりが起こっていることから、肥育舎も合わせて投薬しました。

 

 三番目のケースでは慢性的に豚赤痢の問題の続いている一貫農場で撲滅の計画を立てましたが、育成豚を治療前に移動することはできませんでした。ここでは母豚に修正プログラムを適用しました。出荷できる肥育豚は出荷し、残す豚は育成豚が出荷されていなくなるまで隔離処置しました。

 

 四番目のケースではNeto2008)が野外飼育の農場で2ヶ月にわたって低濃度のチアムリンを使用し、繁殖候補豚には4週間後にチアムリンの注射を行うよう提唱しました。

 

 豚赤痢は増えつつあるスリーサイトの生産システムで効果的に撲滅できる病気の一つで、繁殖豚群に集中し、豚を入れ替えることなく撲滅することができます。人によっては(McOrist, Bennett, 2006)同時に環境性肺炎(マイコプラズマ ハイオ二ューモニアエによって起こるもの)も同時に撲滅できるといっています。これについては担当獣医師に相談してみるべきです。

 

デナガードの感受性と用量の選択

 病原体のブラキスパイラ ハイオディセンテリアエの検出には新鮮な糞または大腸のサンプルを検査機関に送り、感受性試験も行いましょう。この試験はとても複雑な手順が必要なので、その検査機関でできるか確認しなければなりません。病原体が検出されたらさまざまな抗生物質に対する最小阻止濃度(MIC)が評価できます。MICとは病原体の発育を阻止できる最小の抗生物質の濃度です。これは通常薬剤の二十希釈によって行われ、その細菌がその抗生物質に対してどれくらい反応するかわかります。アガロースのプレートテストでMICが検出されると、その濃度が殺菌濃度に近いということになります。細菌が増殖している場合、その濃度が一段階低いことになります。

 MICと大腸に達する薬剤の濃度は関連します。普通、我々は検出された細菌を消化管内で十分に殺して再感染を防ぎ、撲滅できるようにするために、殺菌濃度の4から5倍の濃度(図2.参照)を探します。

 もしその細菌のMICがとてもたかく、盲腸内の薬剤の濃度を超えていた場合、耐性菌の出現が疑われるので他の薬剤を探しましょう。

著者の注意:国によって添加率は違うので、実行する前に確認してください。休薬期間が延長する場合があります。

本文章は最初にPig Worldに掲載されました。

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(PigSite Articles 2009. April by David Burch)






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