(PigSite Articles: Porcine Respiratory Disease Complex 2009/02)
養豚疾病特集
豚呼吸器複合病
数種類の病原体の複合感染と環境ストレス、免疫刺激によって起こる豚呼吸器複合病(PRDC)が豚の健康に影響を与え、成績の低下や治療コストの増加、そして死亡率の増加を引き起こします。PRDCが発生した農場は、典型的には30〜70%の豚が影響を受けて死亡率が4〜6%、二次感染によってはさらに高い割合になります。
BPEX(英国養豚理事会)ピッグ ヘルス スキーム(BPHS)ではPRDCのコントロールや衛生プログラムに役立つ、屠場での肺の障害レベルの情報を提供し続けています。
目的
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BPHSのデータを用いて問題を定量化すること
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PRDCの健康被害を最小限に抑えること
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離乳後の事故率を4%以下に抑えること
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育成豚の健康と成績、そして福祉を改善する事
臨床徴候
PRDCは普通肥育豚舎に移動してから8〜10週間たった後の、14〜20週齢で発生し、それは深刻な呼吸器病の発生による成績の低下として認められた状態を言います。
典型的なPRDCの臨床徴候
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活力の低下
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食欲の低下
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発熱
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鼻汁
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目ヤニ
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発咳
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努力性の呼吸
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皮膚、特に耳翼の色が紫に変色
全てのケースで同様のことが認められるとは限りません。症状が軽いところもあれば、深刻な例では回復不能な障害や死亡につながっているところもあります。
PRDCの原因となる病原体はウイルスまたは細菌、あるいはその両方によって引き起こされます。原因となるウイルスには以下のものがあります。
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PRRSウイルス
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コロナウイルス
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豚インフルエンザウイルス
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サーコウイルス(PCV2)
細菌性の病原体で、しばしば単独もしくは複合して問題となる主なものを以下に示します。
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マイコプラズマ ハイオニューモニアエ (マイコプラズマ性肺炎)
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ヘモフィルス パラスイス (グレーサー病)
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ストレプトコッカス スイス (連鎖球菌病)
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ボルデテラ ブロンキセプティカ (萎縮性鼻炎)
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アクチノバチラス スイス (アクチノバチラス・スイス病)
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アクチノバチラス プロロニューモニアエ (豚胸膜肺炎)
PRDCを診断するためには、発生の日齢や発症率、死亡率、投薬への反応、最近の母豚と子豚へのワクチンの使用などの情報を含む詳細な病歴情報を得ることが必要です。問題となっている病原体を特定するために、検査機関にサンプルを送る必要もあるでしょう。確定診断が難しい場合もあるので、獣医師に相談してください。
管理上のガイドライン
PRDCが発生すると治療費が増加し、成長率が低下して飼養効率が悪化し、死亡率も増加するために生産コストが大きく増加します。予防を成功させるためには適切な時期のワクチン接種と環境ストレスの改善、そしてほとんどのケースで管理方法に変更を加える必要があります。
表1:部分または総スノコ床、または踏み込みシステムでの飼育密度 |
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生体重(s) |
最小限必要なスペース(u/頭) |
<10 |
0.15 |
<20 |
0.20 |
<30 |
0.30 |
<50 |
0.40 |
<85 |
0.55 |
<110 |
0.65 |
>110 |
1.00 |
※踏み込み式の肥育舎では生体重が95sで1.4u/頭を推奨します
提供元:Defra Code of Recommendations for the
Welfare of Livestock
PRDCの予防のキー要素
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厳密なバイオセキュリティーを実践すること
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農場や豚舎、部屋単位のオールイン−オールアウトを実行し、移動グループごとに徹底して清掃して消毒する
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豚のミキシングと移動を必要最小限に抑える
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豚の飼育密度を確認し、適切に保つ(表1参照)
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獣医師に相談してマイコプラズマ肺炎やPRRS、PCV2などの適切なワクチネーションプルグラムを実行する
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PRDCのコントロールは獣医師とともに豚インフルエンザのコントロールへとつなげるべきである
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毎日の室温をモニターし、温度の変動を±2℃以内に抑える
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専用の換気システムで湿度を70%以下に抑える
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良好な喚起でよどんだ空気を排出し、アンモニアレベルが50ppmを超えないようにする
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駆虫プログラムを確立して回虫の体内移行を減らす
PRDCのコントロールには獣医師と生産者が力をあわせた大きな努力が必要です。厳密な管理や環境のモニタリングを継続し、スタッフや獣医師でBPHSや生産記録など入手できる限りの情報を定期的にチェックしなければなりません。これには母豚群の免疫状態を安定させるためのワクチネーションプログラムの確立にもつながるでしょう。
BPHSレポート
BPHSの獣医師はと畜場で肺と胸膜の障害レベルを記録しています。生産者や獣医師は農場におけるPRDCの変遷を見ることのできるマイコプラズマ肺炎様の障害や肺膿瘍、胸膜肺炎や胸膜炎などのBPHSレポートが利用できます。
BPHSレポートはPRDC対策の効果のモニタリングにも利用できます。
2009年2月
(PigSite Articles: Porcine Respiratory Disease Complex 2009/02)
日本でも同様にと畜検査の情報還元システムを提供していると畜検査所がいくつもあります。疾病のモニタリングとコントロールにぜひ有効活用することをお勧めします。
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