養豚衛生特集
豚腸腺腫症(豚回腸炎)
(PigSite Articles by Meriden Animal Health 2009/08)
この特集中の回腸炎の原因、様々な臨床症状と予防、治療に関する内容はマリデンアニマルヘルス(Mariden
Animal Health)より提供されたものです。
豚腸腺腫症(PIA)もしくはより一般的に豚回腸炎と呼ばれる病気は消化管内の細菌であるLowsonia intracellularisと小腸内の様々な病原因子の変化が関連したものを指します。病原体は主に小腸、時には盲腸まで及ぶ粘膜上皮に影響を与え、粘膜の肥厚や出血が見られることもあります。
この病気は6〜20週齢の育成から肥育期の豚に影響を与えます。通常は穏やかで慢性的な感染性の下痢と体重減少、または飼料効率の低下による発育不良として現れます。血便と突然死を伴う急性の出血型はあまりおこりません。
回腸炎はほとんどの農場に存在します。この病気は四つの異なった現れ方をします。
@.豚腸腺腫症(PIA)-小腸を裏打ちする細胞の異常増殖による消化管の肥厚
A.壊死性腸炎(NE)-小腸の肥厚に合わせ、増殖した細胞の壊死や脱落が起こり、壊死や潰瘍病変を起こす。
B.限局性回腸炎(RI、TI)-小腸の限局的な炎症
C.増殖性出血性腸炎-小腸内の大量出血によりbloody gutと評される病態で、育成から肥育豚でもっとも一般的に認められる。
病原体はLowsonia intracellularisと呼ばれるグラム陰性の偏性消化管内の細菌で、Desufovibrionaceae科に属します。感染から発症までの潜伏期間は2から3週間です。病原体は小腸を裏打ちする腸上皮細胞の内部に生息し、活発な細胞の増殖と腸壁の肥厚を起こします。これが消化管の吸収能力を低下させ、成長を抑制したり飼料効率を10〜20%低下させます。
Lowsonia intracellularisは豚から豚に、糞の経口摂取で伝染します。哺乳子豚は最初に母豚の糞から病原体の感染を受けます。離乳後では、より月齢の進んだ豚で広がり、発症した豚からより若い、感受性のある豚へと広がります。病原体の感染を受けると10から14日以内に臨床症状が現れ、糞中に数週間病原体が排出されます。豚群内の保菌豚が存在することが他の豚への感染源となりますが、その豚が摘発されることはありません。鳥やネズミ、汚染された器具なども感染を広げます。
病態
慢性型(離乳豚、育成豚)
最初の段階では、普通は正常に見えて、食欲もあります。慢性的な水様下痢を起こし、徐々に痩せてゆきます。
時々、太鼓腹でおなかが膨れたような姿になる豚もいます。回腸炎の慢性型では回復に4から6週間かかりますが、飼料効率と日増体重がそれぞれ0.3と80g減少します。その結果、豚の大きさに大きな違いが出て豚群が揃わなくなります。NIやRIは小腸末端部の壊死を伴う同じような症状があらわれ、ホースのように厚く肥厚した部分から組織が壊死して脱落します。慢性型のこの病気では、症状が呼吸器病などの他の問題に隠れていることがあります。
急性出血型(肥育豚;母豚、未経産更新豚)
この型は普通4から12カ月齢の豚で起こります。普通は更新用母豚、特に一般の農場に新規に導入されて7から10日後までのストレスのかかっている期間に起こります。一般農場も種豚場のどちらでも、更新豚が感染を受けると多くは死亡します。
肥育豚の場合では、回腸炎はと畜する7から10日前の仕上げの豚に育成豚と同様の影響を与えます。多くの発症した豚が出血性の回腸炎で死亡します。このような肥育豚にはふつう母豚の発情や妊娠期、授乳期の母豚に対するような関心がほとんどはらわれていないことが原因です。なぜなら、この病気はわずかな時間で起こる急性のもので、生産者は豚が回腸炎で死に始めてから気付き、それでは手遅れになっている場合が多いです。
肥育豚で発症するのは、普通豚群内で最も多きく素晴らしい豚です。豚赤痢に似ていますが、粘膜は含まない血液を肛門から排出し、粘膜や皮膚が蒼白になって突然死します。
治療と予防
臨床的にも検査期間での試験でも、タイロシンやチアムリン、バルネムリン、リンコマイシンやその他のテトラサイクリン系の抗生物質がたぶん効果的でしょう。しかしながら報告によると抗生物質の治療期間が終わると病気が再発し、少なくとも治療の数週間後にはLowsoniaの排出が始まるために撲滅は通常不可能だと思われます。
その他に薬物による回腸炎の治療で問題となるのは、常に残留期間が存在するため、生産者は豚を販売する前により長く飼育する必要があったり販売や移動スケジュールがくるったりします。チアムリンやタイロシンなどの飼料添加薬は古い薬であり、たぶん耐性のために治療の反応があまり良くありません。
たとえ注射薬を使ったとしても感染した最も価値のある豚の20%は回腸炎で死亡し、僅か50〜60%しか生き残りません。これらの注射薬は12時間間隔で2、3回投与しなければなりません。豚を分けて注射している間、普通はストレスによって何頭かの感染した豚が死にます。感染した豚に注射するために必要な労働力のコストもかなりかかります。そうしたことでよくわかる事実ですが、回腸炎は生産者に経済的に莫大な損害を与えるということです。
オレゴスチンと豚の回腸炎
オレゴスチンは回腸炎の治療と予防にとても効果的です。回腸炎のある多くの農場で成長促進の目的で使用したとき、薬剤を使用せずに回腸炎が劇的に減少できた、もしくは慢性型のものも潜在性のものも撲滅できました。Lowsoniaの感染や消化管の障害が無いことはPCRと組織病理学的検査で調べられました。
効果的に回腸炎を予防するためにはオレゴスチンパウダーを離乳後から体重15sまで飼料にトン当たり1s添加し、次に育成期間もしくは体重25sまではトン当たり500g、最後に育成-肥育期間から出荷するまではトン当たり250g添加します。深刻で急性の出血性回腸炎の場合では、治療開始の最初の二日間にオレゴスチンのリキッドを飲水に1000?あたり500mlの割合で添加し、次にオレゴスチンパウダーをトン当たり500gの添加を5日間続け、その次の一週間は250gで添加します。結果は普通12から18時間で現れ、発症した豚の食欲が回復します。出血型の影響を受けている生産者の方で、豚群で回腸炎の発生が疑われたとき、すぐに上記のやり方と現在の治療方針を比較することをお勧めします。
慢性型の回腸炎では、通常に症状が現れる時期のひと月前から治療を開始するべきです。健康な豚群への広がりを予防するためには、回腸炎に汚染されたグループで最初に臨床症状がみられる前に使用を開始するべきです。汚染された豚群と予防したい豚群の両方に、最初の一週間の治療ではオレゴスチンを倍量添加します。短期間の治療ではオレゴスチンパウダーを半分の割合で添加し、オレゴスチンリキッドを使う方法でもいいでしょう。