交配と繁殖特集

産子数と生時体重に影響する因子

(The PigSite Articles January 2009. by Hypor)

質の高い子豚を良い状態でたくさん産ませること、そして生時体重がウィーニングキャパシティーを最大限に引き出すためには重要です。なぜなら、これが離乳時の子豚の数と体重へとつながるからです。この部分に注目した以下の管理方法が目標の達成に役立つでしょう。

産子数が多いということはウィーニングキャパシティーを最大にするためにとても重要です。なぜなら、離乳子豚数がこの計算上、鍵となる成分だからです。しかしながら、生存産子数が多くても死産子数や離乳前の死亡によるロスが多すぎてはポイントがずれています。ハイポーの選別基準にはこのようなことがないように生存産子数や生時体重、離乳子豚数が含まれています。加えて、泌乳能力を高く確実なものにするために乳頭の数や質も厳密に選別しており、子豚の生存率が最大限に引き出され、品質の高い離乳子豚がたくさん確保されます。

遺伝的影響

 生時体重は子豚の質や生存に影響する重要な形質です。平均生時体重や総産子の体重の合計などの特性には高い遺伝性があり、それぞれおよそ0.250.15です。ほとんどの生産者がご存知のように、800g以下の小さな子豚や一腹の子豚のばらつきは離乳前の事故を左右する主要なファクターです。こういうファクターもかなり遺伝しやすく、そのような母豚には遺伝的な改良の余地があるという事になります。小さな子豚や一腹のバラツキの遺伝性はそれぞれ0.100.07です。産子数だけを求めると、結果として生時体重や子豚の一様性が損なわれます。なぜなら、産子数と子豚の品質には負の相関関係があるからです。これはつまり、1つの事を追い求めると、間接的にそれとは逆方向の特性を発達させる事になるのです。全体的に見て、選択時に注目するのは質の高い子豚を作り、分娩時の総産子の体重の合計を増やすことを目的とします。平均生時体重が1.5kgの質の高い子豚を15頭得られれば、総産子の合計体重は22.5kgになります。これは産子数を追い求めて選別する時に、子豚の質や生時体重についても妥協しないようにすることによってのみ成し遂げる事ができます。

しなければならないこと:環境、栄養、管理のファクター

 遺伝形質が産子数に影響する最大の要因ですが、それ以外にもたくさんの環境的、栄養学的、そして管理上のファクターがそれぞれの農場で重要な役割を果たしています。これらの中で最も重要な事に着目する事で、産子数を改善させるだけでなく、さらに重要なウィーニングキャパシティー(離乳能力)を改善する事ができるのです。生時体重は農場レベルでは変えるのは難しいという悪い考えがありますが、わずかでも改善させられるポイントがいくつかありますし、分娩時の子豚の生存率の改善にもつながります。

初回交配時の体重

 初回交配時の母豚候補豚の体重と発情の回数が初回分娩の産子数に強く影響し、その後の産子数も左右します。この話題についてはGilt management for maximum lifetime productivityで詳しく述べています。

交配の技術とタイミング

 発情期の正確な時期に効果的な交配を行うことが、たくさん受精卵ができることにつながり、産子数も改善されるでしょう。発情発見の方法や精液の品質、衛生基準や精液注入の技術、特に母豚をよく刺激することが効果的です。育成豚や母豚の交配時間を明確に決定した交配プロトコールを実践することが、離乳から発情までの間隔とスタンディング発情の長さに関連し、産子数の改善にもつながるでしょう。

胚の生存率を高める管理法

 妊娠初期の受精した胚子が子宮壁に定着する過程が終了するのは交配から約28日たってからです。この定着までの期間、胚子はとても傷つきやすく、子宮壁の状態が理想的でなければ再び壁から離れ、死滅します。ですから,母豚は少なくとも交配から28日までは動かさず,環境も静かで驚かさないようにしなければなりません。この期間のストレスは何でも胚子の損失につながり、異常な高温や、隙間風を伴う低温も母豚の再発につながります。研究によると、妊娠初期から中期にかけて雄豚を近くに置くこととライティングを適切にすることが胚子の生存率に良い影響を与えるそうです。

妊娠初期の飼養管理

 ごく最近まで妊娠の初めの2128日までは、胚子の生存率を高めるために給餌量を少なく抑えるという事が広く推奨されてきました。しかしながら、最近の研究と実際のデータから、現代の極端に脂肪が少なく生産性の高い母豚でこれを実践すると逆効果で、産子数や分娩率の低下につながる恐れがあるようです。未経産豚で2.42.6kg、母豚で2.62.8kgの範囲に給餌量を設定するのが産子数を最大にするためのベストな方法だと明らかにされましたが、まだ評価には更なる実践が必要でしょう。より細かい情報はFeeding the sow and gilt in gestation.に載せています。

授乳日数

 授乳期間の長さは産子数に大きく影響します。典型的には14から28日の範囲で、授乳日数が1日長くなるとその次の産子数が0.1頭ずつ増えます。授乳日数が28日を超えるとそれ以上産子数が増加することはありません。授乳日数を伸ばしたコストと生産性の改善のバランスを比べると、最適な長さは24-25日だそうです。授乳期間の長さに関わらず、その週の分娩頭数によって離乳日齢を変えてはいけません。なぜなら、これは育成や肥育ステージのピッグフローや成長速度に影響を与え、生産がバラついて利益が損なわれます。

離乳から交配の間隔

離乳から交配まで、より正確には離乳からスタンディング発情までの間隔はその次の分娩、特に産子数を最も示唆する重要なポイントだと思います。離乳から交配までの平均日数が6日以下で、95%の母豚が離乳から7日以内で交配できた場合が最も産子数が高まります。産子数に影響する多くのファクターの中で、最も重要なのは授乳期間中の飼料摂取量で、このことはLactation feeding for maximum intakeで説明しています。

 ハイポーの繁殖評価でも離乳から交配までの期間がしばしば取り上げられてきました。あまり大きくは取り上げられませんでしたが、継続的に強化されてきたのです。しかしながら、何年もかけてほとんどの種母豚のラインで約12日の遺伝的な改良が行われました。我々のベンチマークのデータによると、離乳から発情までの間隔が平均で5.8日と比較的短い事が示されました。離乳から発情までの間隔が短いと、発情期間が長くなる傾向があります。

 若い雌、特に一産目の離乳後の母豚は発情が長く、とくに発情が見つけやすいでしょう。授乳期間の最後の7日から交配までの間に、できれば高リジンの飼料(1.2-1.3%)、そうでなければ高濃度の飼料を1日0.5kgトップドレスして給与すると体重の減少が抑えられ、結果として発情開始が早まります。

 離乳から交配までの間に高い飼料摂取量を保つ事も産子数を最大にするためには基本的なことです。1日四回の給餌、もしくは飽食とし、たっぷりときれいな水が飲めるようにすること、飼槽の衛生を良好に保つ事も摂食量を高める助けとなるでしょう。離乳後にグループで管理した方が、ストール飼いの場合よりも発情までの間隔が短くなります。適切なライティング−最低100ルクスで、できれば150ルクスの光量を11416時間照射すると発情が早く始まる助けになります。雄との接触も重要なファクターです。特に、発情が始まる23日前が大事です。

産歴の分布

 産子数は三産目まで増加し、その後は年を重ねるにつれて減少する傾向があります。また、死産子数も年齢を重ねるにつれて増加し、生時体重もバラつくようになります。ですから、安定した産子数と子豚の品質を高く維持するために、母豚群の産歴が安定していなければなりません。このためには定期的な更新母豚を導入する事と、一番生産性の高い36産までの母豚の頭数を高く維持し、78産以降は必ず淘汰するようにしなければなりません。それに対して更新母豚の導入が不定期である、若い産歴の母豚の淘汰率が高い、もしくは淘汰基準が厳密でないなどの理由で産歴分布がアンバランスになると、平均産子数や生時体重に望ましくないバラツキが生じる結果となります。このことは成長や離乳から出荷までの効率に対して多くのマイナスの関係を持っています。産歴管理の情報はAchieving the correct parity structure.でさらに詳しく説明しています。

子豚の生時体重を高めるために

 生時体重が離乳時の体重を決定する最も重要なポイントで、ウィーニングキャパシティーを決定する1つの鍵となります。これを改善するのは難しいですが、いくつか改善に役立つポイントがあります。最も広く実践されているのは妊娠末期の飼料のレベルを高める事、典型的には妊娠の最後の2128日間の飼料を初産の母豚で2.62.8kgに、経産母豚では2.83.0kgにします。これの生時体重に対する影響はあまり大きくはありませんが、子豚の生存率には良い影響が現れます。最近のフランスの研究によると、油脂を給与すると(トータルで5%の油脂)死産子数が少なくなり、小さな子豚の生存率と離乳時の体重が改善されるようです。繁殖サイクル全体を通じて適切なレベルの餌を給与する事と、母豚の健康に気をつけることも生時体重の改善につながるでしょう。

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(The PigSite Articles January 2009. by Hypor)



管理者のコメント
 またハイポーさんの記事からです。最近はピッグサイトによくハイポーさんが投稿されていますが、書いているのは誰なんでしょう?
 さて、前に紹介した文献で、ハイポーではSPL(Sow Productive Life:母豚の生産期間)を5.8腹を目標にしていて驚きましたが、この文中ではそれを裏付けるような記述はないようです。むしろ、7、8産目以降は厳格に淘汰せよというセオリーに沿った基準なので、これで5.8腹はありえないようですが・・・。聞いた話ですが、日本のハイポーの母豚もタフで長く使えそうだけど、やっぱり産歴が増えると子豚がバラついて肥育の成績が悪くなるので淘汰はやはり7、8産にするそうです。
 また、ピッグジャーナルの2009年1月号ではケンボロー22で「年間平均母豚回転数2.6、年間1母豚当り27頭出荷。初産豚の淘汰がゼロ、平均の廃用産次が10産で、母豚の生涯離乳頭数は80頭以上。」というすごい成績の生産者が出ていました。初産豚の淘汰がゼロというのはすごいと思いますが、やはり繁殖成績を上げるためには初産、2産目で調子を落とさないということが大前提になるのだと思います。


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