スポーツドリンク技術が母豚の分娩を介護する

母豚の年間生産性(Annual sow productivity: ASP)に与える二大要因は生存産子数と離乳までの成績である。最近の技術の進歩により、これらの初期のステージの生存率と生産性を改善し、ASPの改善が助けられるようになってきた。

(Pig Progress Vol. 23, No.3 2007 by Dr. Mike Varley)

ASPは収益性を左右する大きな要素です。母豚1頭あたりの年間産子数と販売頭数がビジネス上の売り上げを決定し、母豚に必要な飼料代や豚舎のハウジングなどの固定コストをそこから差し引いた分が利益となります。
 ヨーロッパの生産者のベンチマークによると、およそ26頭の生存産子数で23頭の出荷頭数だといい成績だといっていえます。究極のゴールとして、よく年間30頭の生産が言われており、そして何人かは実際に継続してこの数字を達成しています。

年間30頭という大きな数字を達成している生産者であっても、彼らのASPが特に良いというわけではありません。産子数が高いといえども、平均生時体重が800gほどではあまりいいとはいえません。このようなケースでは授乳中や離乳後の死亡率や成長速度が平均以下であることが多いです。

ASPを改善するすべての要素のなかで、生存産子数と離乳頭数が最も重要なものになります。農場の記録を分析する時、受胎率や分娩率、不受胎の割合や離乳から発情までの間隔ももちろんASPに影響するので重要だし、産子数や死亡率と同様に経済的な利益につながります。図1ではASPに影響する全ての要因を示しています。

分娩時間の延長

 生存産子数にはいくつかの影響する要因があります。最近の多産型に改良された品種では、分娩直前の子宮の中にはおよそ14頭の生きた胎児が存在します。しかしながら、この数字は胎児が子宮の中を長く移動しなければならなくなり、分娩にかかる時間そのものを長くしてしまいました。その結果として、分娩中の胎児の死亡が増えてしまったように思います。多分2頭が低酸素もしくは無酸素で死亡するでしょう。この数字は過去に発表されているデータや多くの農場で経験されているふつうの事といっていいでしょう。これが実際の生存産子数が12頭という結果になり、またいい数字だと思います。次に起こるのが、分娩の最後に産まれた1.5から2頭の子豚は生後数時間で死んでしまう事です。これはまた長い分娩時間に関連して起こることで、最初に産まれた子豚から最後の2頭までは68時間かかります。胎盤は分娩の最初の段階で酸素の供給を停止し始めます。

 これらの最後の2頭の子豚は生きて産まれますが低酸素状態で、母豚による圧死の被害を受けやすいです。また、これらはより元気なほかの子豚に打ち勝つ事が出来ず、飢え死にしたり免疫がもらえなかったことで病気になったり、温度調整のメカニズムが停止してしまいます。このことで、泌乳開始から23日で子豚が10.5頭に減少します。ここから平均して0.5頭の子豚が圧死で失われ、また0.5頭が新生児の消化管もしくは呼吸器の病気で失われます。こうして離乳頭数が9.5頭になり、もともとの頭数から33%も減少させてASPを低下させてしまうのです。これらの部分の死亡率がいまだに主要な問題点となり、経済的なロスや最近の動物福祉の問題にもつながるのです。

避けることが出来るか

 これらのロスの多くの部分は避けることが出来ます。離乳前の問題は衛生管理や注意深い子豚の管理、細かい部分まで行き届いた観察によって最小限に抑えることが出来ます。スタッフの訓練が高い成績を達成するためには最も重要な要素になるでしょう。

 労働者の賃金があまり高くない国ではスタッフは基本的なところから訓練を受け、分娩室は24時間監視して離乳前の問題を最小限に抑えます。国によっては労働者の賃金の問題からこのような観察ができないところもあるでしょう。

 これまでに話してきたように、分娩中に胎児が長い時間をかけて娩出されるまでに大きなロスが発生します。この部分のロスを減少させることで生存産子数を2頭改善する事ができ、これは自動的にASPが約5頭ふえることになるのです。

 過去3年間において、SCANuTecはプロバイミの研究プログラムと特許を使い、分娩中の問題に焦点をおいてきました。それによって、産子数が増えて分娩時間が長くなると明らかに低酸素の子豚が増加し、死亡率が増加することが分かりました。

 研究チームはこの解決策は母豚がたくさんの子豚を産むために経験する疲れや消耗を防ぐ事だと分かりました。研究チームは死亡は分娩の終わりに発生し、母豚に栄養補助をすることで母豚の疲労を防いで分娩スピードが上がり、結果として子豚の生存率が上がるということが分かりました。

 調査が進むにつれて、ビタミンやミネラル、エネルギーを複合させた「スポーツドリンク」タイプの技術をつかい、簡単にアプリケーターガンで給与できる製品の開発につながりました。今試験が成功し、広く使われているこの「ParturAid」の栄養ペーストは母豚に130ml、分娩08時間前に経口給与します。この製品はより早く分娩するために必要なエネルギーと成分を配合しています。

試験

研究所で行なった試験では分娩間隔が平均で50分間、160から110分に短縮できました。もっと重要な事は、この分娩時間が短くなった事は分娩における「打ち止め」の部分を無くしてくれるということです。分娩の最終に産まれる子豚もより安全な時間帯に誕生する事ができるので、分娩の延長に関わる死産子数が減少するのです。イギリスとオランダ、デンマーク、スペイン、ポーランド、米国、ドイツで大規模な試験が行われ、同様の結果が得られました。つまり、死産子数と新生児の死亡率の大きな減少が確認されました。母豚の飼料摂取量の記録でも分娩から最初の一週間でよい結果が得られ、子豚の離乳体重で平均0.5kgの増加が認められました。付加的な効果には、子豚がより健康に生まれると全ての面で経済効果が影響するという事もあります。

継続的な反応

 初期に行った死産子数と新生児の死亡数の減少に関する試験結果を図2に示します。養豚生産国における農場での反応は製品のよさを反映しています。この方法で農場のASPで生存産子数が増えると、たとえ11頭増えたとしてもコスト対効果は10倍以上です。

 生存産子が12.3頭で分娩回転数が2.6回、これらが70日齢で32kgになるとすると母豚1頭当り1024kgの育成子豚が生産できます。究極の目標である、母豚が70日齢での育成子豚を年間1トン生産するというのも達成できます。

(Pig Progress Vol. 23, No.3 2007 by Dr. Mike Varley)

 いや、餌で簡単にそんなに死産子数が改善されるなんてありえないッスから!!母豚が分娩中にガス欠になるのが問題なところならそれなりに効果を発揮するかもしれませんが・・・いやいや。しかし、母豚1頭当りこういうものなら100円くらいでしょうか?母豚200頭の農場で年間分娩が500頭あったとすると、コストは50000円年間くらいか。売上少ないし、取り扱う商品としては魅力ないなぁ。
 この商品はどうあれ、この記事には結構分娩に関する重要な事がたくさんかかれていると思ったので紹介しました。地道な分娩看護に勝るものはないと思います。

 さて、最後にまたなじみのない数字が出てきましたので確認しましょう。70日齢の育成子豚の体重×1母豚当たりの年間生産子豚数=目標1000kg。こういう数字が出るということは、欧米では70日齢の育成子豚の販売が結構普通に行われているということなんでしょうね。
 


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