母豚の生涯子豚生産頭数

(PIG PROGRESS net. No. 183 06 Nov. 2008/11/04 by John Gadd)

私はこれまでにSPL(Sow Productive Life:母豚の生産期間)についてたくさん書いてきました。私自身、養豚生産者が明らかに短すぎる最近の現状に満足している事に悩まされてきました。そのために何をすべきなのでしょうか。私の身の回りの、ごくわずかの方々だけが、SPLが経済的に悪影響を及ぼしている事を十分に理解しています。

例えば、私がこれまでに訪問した最高の農場では、母豚の生涯分娩数を5.5腹で安定させているのに、多くの生産者はたった3.4腹です。実際、最近のハイポーの種豚場でのSPLの目標は5.8腹であり、「離乳力」と彼らが呼ぶベンチマークでは7.25kgの子豚を12頭離乳させる事を前提として、505sを目標にしています。

資金の利用

 表1は私が実際経験したものをさらに分かりやすくしたものです。資金を投入してSPLを適切に改善すると、キャッシュフローも大きく改善されます。私はSPLの目標を400kgどころかハイポーの言う500kg以上にしようという事に迷いはありません。私が受け入れがたいのは、とても身近で目にする数値がわずか250kgだということです。離乳子豚をよりたくさん売って儲ける、という考えから抜け出し、短いSPLによるキャッシュフローへの悪影響に気付いてください。

貯蓄

 更新母豚が最初の子豚を生産するために、例えば375ユーロかかるとします。SPLの高い農場では他の農場と比べて母豚1頭あたり20頭以上の子豚を多く販売し、次の更新母豚に375ユーロかける前に2500ユーロも貯蓄できました。

SPL(産次)

SPL(子豚の体重)

母豚の導入間隔

一週間で必要な育成母豚数

世界の標準

3.4

243kg

1.48年ごと

17

目標数値

5.5

393kg

2.4年ごと

9

1. 母豚1000頭で年間22頭離乳する農場で見たSPLの違い

 キャッシュフローはもっと簡単です。利益がないことよりもキャッシュフローが滞るほうがビジネスに影響します。キャッシュフローは利益を生み出すエンジンの潤滑油になります。
 私が何度も言ってきたことですが、豚から継続的に利益を得るためには最高の成績を出す必要はありませんが、資本は最大限に活かさなければなりません。


(PIG PROGRESS net. No. 183 06 Nov. 2008/11/04 by John Gadd)


 前回の死産子数のコントロールに至る前に、この記事を目にしていたわけですが・・・。まず、この記事で使われているSPL(産次)という言葉についてですが、これは母豚が生涯で何産するかという数字です。日本で普通に指標とされている母豚の更新率30〜40%では、SPLは3.7産くらいになり、この記事の目標とする5.5産となると更新率は20%くらいになるはずです。
 母豚の能力がそこまでもつのなら、5.5産の方が圧倒的に儲かるというのは当たり前です。でも、産次が高くなれば産子数や子豚の体重にバラツキが大きくなり、生産性が下がるというのは当たり前のことです(と、少なくとも私は思っています)。ヨーロッパの豚と日本の豚でそれほど大きな違いがあるとは思えませんし、ハイポーなどのハイブリッドでも若干日本向けに肉質を改良している違いはあるようですが、基本的なところは同じはず・・・。この背景には何が隠されているのでしょうか?「ヨーロッパでは母豚にほとんどストールを使っていないところもあるようだし、そういうとこなら足腰がしっかりして母豚の耐用年数も少し長いんじゃないか?」といった意見もありますが・・・。いずれ世界の標準が3.4産なので、5.5産というのは特別なところです。何か秘密があるのか、これからも情報を探っていきます。
 次に「離乳力(weaning capacity」もしくはSPL(子豚の体重)について。欧米では子豚の販売が一般的なのか、こういう数値が用いられる事が結構あるので確認しておきましょう。
 ここでは離乳時の子豚の体重×子豚の頭数/腹×SPL(産次)が使われています。離乳体重6.5kg、10頭/腹、平均3.7産だとすると6.5×10×3.7=240s。ハイポーの505sは倍以上ですね・・・。ということは、言いかえれば改善の余地がまだまだあるということです!

                             戻る