養豚愛護特集

子豚のコクシジウム病

(PigSite Articles by NADIS, 2009/03)

20082月の英国家畜疾病情報サービス通信(NADIS Health Bulletin)のトピックは哺乳中の子豚の下痢の原因でした。養豚獣医師のマークホワイトがこの疾病の診断と予防法を解説します。


 哺乳中の子豚の下痢は多くの農場でいまだ大きな問題であり、さまざまな感染や環境、管理上の因子によって引き起こされます。多分1020日齢の子豚の下痢の最も大きな原因はコクシジウムでしょう。正確に診断することで完全に予防できるプログラムを構築できます。

写真1.典型的なクリーム状のコクシジウム性の下痢

写真2.コクシジウム病の影響を受けた子豚は状態が悪くなる

写真3.コクシジウム病で典型的に見られる会陰部の汚れ

写真4.潜在性のコクシジウム病による離乳前の発育不良

 豚のコクシジウム病はIsospora suisと呼ばれる寄生虫によって起こります。他にもコクシジウム(アイメリア属)の種類がありますが、まれに若齢の成豚で問題を起こす以外、ほとんどは無害だと考えられています。

 この寄生虫は豚の間で中間宿主を必要としない、直接の感染環を形成します。感染した個体からオーシストが環境に排出され、温度依存性の成熟過程を経て、他の動物に経口感染します。感染した寄生虫は小腸で増殖し、いくつかのステージを経て消化管に障害を与え、下痢を引き起こします。この過程には数日を要するため、コクシジウム病は5日齢以前には発生しません。典型的には10日齢以降で現れます。

 衛生管理がほとんどの病気、特に申請子豚の消化器病の発生とコントロールに重要で、コクシジウム病の発生は衛生基準の失敗を意味します。

 この病気は屋内、屋外飼育のどちらでも発生します。後者の場合、夏場に母豚がヌタウチをして乳房がひどく汚れている場合や、湿度の高いときに敷き料をきちんと交換しなかった場合に起こります。

臨床症状

 下痢は710日齢の一腹の子豚全頭もしくは一部で発生します。下痢は通常黄色いクリーム状で、注意してみると血液が混じっているのが見つかる場合があります。単純なコクシジウム病ではほとんど死亡することはありませんが、E.coliやロタウイルスが複合感染すると死亡率が30%まで上昇します。

 感染した個体は明らかに状態が悪くなり、すべての結果として離乳時体重が減少します。農場の平均の25日齢での離乳時体重がコクシジウム病の発生中は1頭あたり1s低下し、消化管の障害は離乳後の二次的な消化器疾病の引き金となります。離乳時体重の減少は出荷までの成長に影響します(グラフ1参照)。

 抗生物質による個体治療は多くの場合ほとんど効果がなく、離乳時に自然に治まるため、消化管の障害がミルクの過敏症を起こしているのだと考えられています。

 汚染された多くの農場では一腹中の12匹の子豚が7日齢で初期の穏やかな兆候を示し、その他の子豚がそれから57日遅れて発症します。これは初めの子豚が寄生虫の増殖を起こすためです。

 下痢がほとんど認められなくても離乳時体重が落ちている農場では、潜在性の感染が成長に影響を与えていると考えられます。

コクシジウム病による離乳時体重の減少によるその後の成長への影響とは別に、離乳後にコクシジウム病の典型的な下痢が認めないといえども、コクシジウムの潜在感染が離乳後の発育不良の原因になっているという証拠が集まってきています(写真4参照)。調査によると、このような状況は離乳前の臨床的発症とは別に、少なくとも離乳前の潜在的な感染と関連する離乳後のコクシジウム病による発育不良の存在を示しています。


グラフ1.コクシジウム病は離乳時体重に大きな影響を与え、最終的には出荷日齢にも影響を及ぼす。このグラフは母豚300頭の繁殖農場でのコクシジウム病の発生による離乳時体重の減少を示したもので、これは早春に始まり、夏にかけて進行した。トルトラズリルによる治療は27週目で始められた。


グラフ2.離乳時体重の減少に伴う二次的な出荷日齢の影響を示したもの。この農場では離乳時の1頭あたり1sの減少は出荷体重の95sに達するまでの肥育期間を9日間延長した。


診断

 特徴的な臨床症状はコクシジウム病を示唆する重要なポイントですが、他の病原体も関与している場合があるので検査機関での診断も必要です。

 キャリアーの母豚と感染した子豚が糞中にコクシジウムのオーシストを排出しますが、検出するのはとても難しく、たとえ見つかったとしてもそれが原因だと判断する手段にはなりません。信頼できる確定診断の唯一の方法は、治療前の急性感染している子豚を淘汰し、その腸を調べることです。肉眼所見では腸壁が厚くなり炎症が起こっていますが、確認のためには組織検査が基本となります。

 多くの農場では投薬と対策に対する反応が診断の助けとして行われています。

コントロール

 衛生管理がコクシジウム病のコントロールの大きな役割を担います。糞中に排出されたオーシストが環境中(16℃以上の温度下)で感染できる形態に育ち、これは通常の消毒薬には強い抵抗性を持ちます。効果的な方法は火炎と石灰乳の塗布です。後者では、家畜をそのペンに入れる34日前に石灰を使用してください。コクシジウムを殺菌する消毒薬に、デュポン社のオーサイドがあります。これは二つの成分からなる製品で、混合するとアンモニアガスが発生します。ですから、厳格な健康被害を防ぐ指示があり、使用する部屋の中には家畜がいないようにすることと、他の部屋や家畜のいるエリアにガスが漏れないように部屋を密封する必要があります。いくつかの抗コクシジウム効果をうたっている消毒剤があり、環境対策には付加的な効果を発揮するでしょう。飼槽の洗浄がきわめて重要で、必ずしも全てではありませんが、典型的には連続使用の豚舎で飼槽の洗浄が難しいタイプの床(ヒビの入ったコンクリート、カビの生えたプラスチックスノコなど)で発生します。

 野外飼育では分娩ごとにドームを移動させるようにします。問題が発生した場所には種雄豚を近づけないようにしましょう。パドックに残った前回の分娩で使われた敷き料を焼き払うことが野外飼育での疾病対策に重要です(写真5)。しかしながら、環境規制を考慮しなければならないため、農場ごとの状況について環境局に相談してください。分娩パドックでヌタウチが増えると乳房の汚染が増えるので進められません。ヌタウチは暑い時期の育児放棄も助長します。

写真5.

 コクシジウムに対する免疫は現れにくく、馴致は予防の上で信頼できる方法ではありません。実際、母豚の糞中に排泄されるオーシストの量が増えて悪化する場合もあります。

薬剤による治療

 さまざまな方法がこれまでに行われ、結果もいろいろでした。

 母豚の飼料にイオノフォアなどの抗コクシジウム薬と抗生物質を添加する方法も行われましたがあまり良い結果は得られず、今の規制では母豚の飼料には添加できません。

 豚の個体治療が最も効果的なコントロール法です。31017日目でサルファ剤を使用すると効果がありましたが、トルトラズリル(バイエル社、バイコックス)が最も効果的です。

 適切な時期にトルトラズリルを一回投与すると、二つの効果が得られます。コクシジウムのライフサイクルが進行する前に使用すると消化管のダメージを大幅に抑えることができ、発症が防げます。そして、ライフサイクルが十分進んだときに投与した場合、破壊された寄生虫が免疫反応の引き金となり、それ以降の感染を防ぎます。最適な投与時期は子豚が最初に感染を受けてから(通常は生後すぐ)96108時間後です。実際的には生まれた日を0日とするなら生後4日目、1日とするなら5日目に投与します。治療に最適な時期を選ぶなら、生後日齢の記録に基づいて行わなければなりません。午後に生まれた子豚が記録上では次の日の朝になってしまう場合、すでに生まれてから20時間はたっていることになります。

 環境の汚染がかなりひどい場合、適切な時期に投与したとしても10日齢目に二回目の投薬が必要になることがあります。

 ツーステージの分娩・授乳システムを採用している場合(分娩から7日目に母豚と子豚を昔ながらの養育小屋に移動させたり、小さくて弱い子豚の授乳期間を延長するための多頭授乳場に移すやり方)で最初の環境で感染が起こらず、移動させてから7-10日目に発症する場合、トルトラズリルの使用は移動から4日目に行います。

 トルトラズリルが他の子豚の下痢の原因となるロタウイルスやE. coliなどの病原体には作用しないことと、コクシジウムの暫定的な補助診断に役立つということを覚えておきましょう。

 また、英国(とほとんどのEU諸国)ではバイコックスは豚での使用場承認されておらず、獣医師の特別な指示の元でのみ使用できることに気をつけねばなりません。投薬は経口的に行い、1頭当たり25r(20r/s)ですが、10%ほどの子豚の嘔吐を引き起こす場合があります。嘔吐が問題になる場合、水かグリセリンで薄めなければなりません。

 何年にも渡った用途外使用の期間を経て、バイエルは春に豚でのトルトラズリルの承認を取り、残留期間は28日とされました(訳注:日本での使用禁止期間はと畜前の57日間です)

コスト

 コクシジウム病による損害は離乳時体重の減少と、離乳後の成長抑制でおこります。出荷日齢の延長は9日間(離乳時体重が1s低下した場合)で、9日間の維持に必要となる約12.5sの飼料が余分にかかり、出荷体重に到達するまでの飼育スペースが確保できる場合、コストは1頭当たり2.5ユーロ余分にかかります。小さいままで出荷した場合、余分にかかる飼料コストと同程度の損失が発生します。

 用途外使用したトルトラズリルのコストは1頭当たり0.2ユーロです。

20093(NADIS 2007)

(PigSite Articles by NADIS, 2009/03)



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