ワクチネーションでPCV2関連疾病をコントロールする

(PigSite Articles by David Burch, 2009/01)

基礎研究よりも臨床診断を背景として考えた場合、私が何年もPCV2とその感染が関わるPMWSPDNS2つの疾病に関する科学的なレポートに惑わされ続けてきました−David Burch, director, Octagon Services Ltd.

X”因子

病理学者やウイルス学者は感染組織の観察や、組織からウイルスを分離することができます。彼らはウイルスを豚に再び与えて発病させる事ができますが、多くの場合は発病せず、他のウイルスや何か未知の“X”因子のかかわりについて述べてきました。

 他の“共同因子”とされるパルボウイルスやPRRSウイルス、ワクチンによる免疫刺激やストレスによる免疫抑制も病気の発生に関わると思われてきました。

 かつてはワクチンが市販さていなかったので、人々は免疫を獲得した豚の血清療法や、淘汰した豚のリンパ節をすりつぶした物を使った自家ワクチンに頼りました。

 多くの生産者は豚の良好な管理の実施とストレスを減少させる「マデックの原則」をそれぞれのできる範囲で取り入れました。これは最初の高い死亡率を伴う初期の感染の後ではとても有効でした。その後に農場で免疫が構築されて病気の程度も治まり、いくつかのケースではほとんど元の状態まで戻りました。

 いったい何が起こったのでしょうか?多くの著者がこのウイルスは20年以上も前から豚に存在し、そしてイギリス中に広まり、やがて世界に新興感染症のように広まったのです。
 ウイルス株の鑑別が行われていますが、まだ完全な回答は出ていません。

イギリスの母豚グループ

 私はこの病気の問題が発生してから、私が密接に関わっている英国の母豚12500頭グループで肥育期間における死亡・淘汰率が平均9%に達し、さらに20ヶ月以上にわたって廃棄される豚が9%に達するという困難に直面しました(1)

 母豚は屋外で飼育し、子豚は4週齢で離乳してから約100頭のグループを編成し、わらを敷き料に使った育成舎で飼育します。そして1豚房約100頭、2200頭収容のわらを敷き料に使った肥育舎に移し、生体重が約120kgで出荷します。

 この問題を抑えるには多すぎる課題が関わっていました。豚のオーバーフロー、ストレス、過密、コンクリート床の廃糞場所への掃除、他の疾病などです。

 育成期間の死亡率はいつも1%以下で問題は小さかったのですが、肥育期間では徹底的な洗浄と衛生手段を用いたにもかかわらず、感染の圧力とそれによるPMWSの発生がとても高く、コントロールできませんでした。

 PRRSのワクチネーションや性別飼育(英国では雄の去勢を行わない)、病気に強い品種の選択や廃糞エリアにスノコを使うなどの様々なコントロール方法が紹介されましたが、どれも有効ではありませんでした。マイコプラズマ性肺炎のワクチネーションではやや効果があり、死亡率が2.8%、加療率が1.9%まで減少し、と畜場での肺の障害スコアが68%減少しました(1)

肥育期間の効果

 フランスで行われた母豚のワクチネーションの最初の報告では、肥育豚に対する効果がはっきりと認められず、4800頭の母豚を使った評価では肥育期間の死亡率は依然高いままだったと報告されました。

 我々が経験した問題は主に10週齢以降の肥育豚で発生し、育成豚の死亡率はわずか1%でした。私はこういったケースではこの時期に母豚からの移行抗体が弱まり、防御力がなくなったことによるものだと考えました(2)

 2007年のHjulsagerらの行ったPCV2の自然感染の研究によると、抗体が減少するとウイルス血症が起こり、圧倒的なウイルス血症になった場合(およそ12週齢)PMWSが発症します。ウイルス血症でもPMWSにならなかった他の多くの豚はウイルスがコントロールされ、減少し始めます。

感染の急速な拡大

 豚の間で鼻を介したPCV2の急速な感染拡大について注目したこの研究も重要です。また、移行抗体による感染コントロールではなく、移行抗体が減少した豚に対してPCV2感染に対する十分な免疫力をいかに獲得させるかについて議論すべきだと思います。

 ここ最近、私が成長度のチェックを実施している農場でよくウイルス血症の時期(812週齢)と思われる頃に下痢が発生し、同時期に起こりやすい回腸炎や大腸炎に対する治療が効果を発揮しない例が増えてきています。豚によってはPMWSを発症し、問題となっています。

 しかしながら、2006年に英国で、良好な管理基準を実施している(GCP)農場において詳細な観察のもと行われた子豚用PCV2ワクチン(インゲルバック サーコフレックス、ベーリンガー)の試験結果を見ると、離乳からと畜までの死亡率は14.3から4.6%まで減少したことが明らかにされました。

 2週連続した豚のグループからそれぞれ約770頭の子豚を体重、母豚、性別が等しくなるようにワクチンの試験群とプラセボの対照群の2つに分け、4週齢での離乳前である3週齢にそれぞれ接種し、試験開始の0週としました。

 子豚は繁殖農場とは別の育成農場、肥育農場に輸送し、管理しました。これらの農場はPRRSとマイコプラズマ ハイオニューモニアエの汚染がなく、死亡率や成長への他の病気の影響は除外されました。両方の豚群は同じペンで管理され、環境からの感染レベルは同じでした。

一週ごとの評価

 豚は試験開始から7,12,17,20週目に体重測定を行い、毎週 臨床的な検査を行いました。死亡率は個体ごとに記録し、死体や淘汰した豚は病理検査を行いました。それぞれのグループで毎週血液のサンプリングを行い、定量PCRによるウイルス検査を行いました。PCV2のウイルス血症は試験の4-5週目から始まり、5-6週目がピークになりました(図4)。

 ウイルス血症は同時に始まりましたが、ワクチンを接種した子豚では対照群と比べて平均のレベルが低く、ピークが約1週間早まりました。ワクチンが免疫システムを刺激し、ウイルス血症に対する反応がより早く行われたのです。

 ウイルス血症の期間を通して、試験群では対照群の豚と比較して平均値が低く、臨床症状と関連する106GEs以上の高いウイルス血症の豚の頭数も少ないという結果でした。

 それぞれの豚の生存頭数を図5に、ウイルス血症の発生前後の死亡率を図6に示しました。

 ワクチンを接種した豚のウイルス血症の発生後に、劇的な死亡率の減少が起こりました。成長率の違いもウイルス血症の発生後に認められました(図7)。生体重の違いは試験20週目にワクチン群で6.6kg良好な数値として現れましたが、統計学的な有意差は7週目から現れました。この試験により、深刻なPCV2の感染に対して子豚用ワクチンが肥育期間までの防御効果を発揮するという効果が明らかにされたすぐれた結果です。

 さらにPMWSがより最近になって問題になった北米での野外試験の結果を示します。そこでは英国の調査結果を踏襲する内容で、またと畜までの肥育期間中、継続的な防御効果を発揮しました。母豚1300頭のマルチサイトで、18ヶ月間に渡ってPMWSの被害を経験している農場で試験を行いました。損害は普通肥育舎に移動してから3-4週目に始まり、豚が約9週齢の時点でした。豚の日齢の若くなる4農場で試験を行ないました。

 農場145-59日齢、農場238-45日齢、農場322-36日齢、農場419-22日齢。試験に供したのは3850頭の子豚で、試験群とプラセボの対照群に分け、別々の豚房で飼育しました。

 この農場もPRRSとマイコプラズマ性肺炎が陰性の農場で、ワクチンの効果は基本的にPCV2感染の影響によります。結果は表2と図8に示しました。

 死亡率が9.5%から2.4%へと大きな減少が認められ、正常な肥育豚の死亡率と評価されました。

 19-22日齢でワクチン接種を受けた子豚も、少なくとも試験期間中は防御されました。

 母豚からの移行抗体はワクチンに干渉しませんでした。ワクチンがPDNSを抑制という報告はありませんでした。

 初期のPCV2PMWSPDNSに対する病原性への関与の混乱が今明らかにされました。PCV2は極度の感染を引き起こし、死亡率を増加させ、視聴率を抑制するが、子豚の早い段階でのワクチンにより効果的に予防できる。

(本文献はもともとInternational Pig Topicsで発表されたものである。)

(PigSite Articles by David Burch, 2009/01)




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