(Pig International June 2006 by David Burch)

これがサーコウイルス病に対する新しい見方
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 ここ何年かPCV2と呼ばれる豚サーコウイルスの感染による被害の大きなPMWSについて話題にしてきました。最近では豚サーコウイルス病はPCVDとして紹介される事が多くなってきましたが、用語の変化に伴って病気そのものも変化しつつあり、ワクチネーションプログラムで効果的にコントロールできる兆しが見えてきました。

 2006年、北アメリカではサーコウイルス病が消え始めているという報告が出され始めました。病原性のタイプ2ウイルスが最初に分離されたのは数年前ですが、今ではそれが世界の他の地域の農場を汚染し、その感染による若齢豚の死亡が報告されています。しかし、最近では北アメリカの生産者は同様の破滅的な高い死亡率(3040%)を育成初期の豚で経験するようになり、これは1990年代後半のヨーロッパやアジアで見られたのと同様の推移でした。

 しばらくの間ヨーロッパではこのような高事故率の状況がどこでも認められましたが、やがていくらか落ち着きました。この病気の急性効果が大きく抑えられたのです。今、ヨーロッパの人々は慢性効果の中で生活しており、効果的な病気のコントロール法と“マディックの20原則”として知られるようになる管理方法の実践により、死亡率は010%に落ち着きました。これらの管理方法とは、ストレスを減らし、豚と豚との接触を制限し、衛生を改善して感受性の高い豚への病気の感染を減らす事を目的にしています。

 これが全ての報告をまとめるにはまだ検討しなければならないことがありますが、ヨーロッパの生産者や獣医師はこの今発生している病気(より正確には感染の結果として現れる死亡率)はPMWSと名づけられる前からあったと思っています。そして急性相は哺乳・育成ステージで明らかに大きなダメージを与えます。今、慢性型のこの病気が肥育の初期に影響を与えています(図1)。

 感染を受けた豚と感染していない豚では大きさに差も生じます(写真)。ヨーロッパの生産者が言う“30sシンドローム”とは、豚が30kgになって肥育期に入ってから、他の豚が100kg増体するところ30sしか増体しない豚のことを言います。コスト計算をすると、その影響は生産性においては死亡率と同様の損害を与える事が分かりました。

 この病気の本態はまだ明らかにされていません。しかし、臨床症状を示したものの検査から豚サーコウイルス2型(PCV2)が他の因子と複合して悪影響を与えるという点には一般的な同意が得られています。ワクチンによる免疫刺激、他のウイルス(PRRSPPV)、細菌感染、遺伝系統、飼料やマイコトキシンなど、PCV2の変異に影響を与えると考えられる未知の原因X(まだ発見されていない他のウイルスの可能性もある)など、ほとんどの可能性のあるものが検討されてきました。

 この病気は流行性の感染症のように国境を越えて広がり、今では大陸も渡りました。豚の移動や接触、精液の輸送や近隣農場への感染の広がりが電線のような大きな役割を果たしているようです。高死亡率の状態が続く急性相が豚群の免疫獲得につながり、二次的に死亡率の低い慢性相へと続くという事が感染性のものだということを示しています。

 PCV2に実験感染させた子豚の病理検査では、感染を受けて破壊されたマクロファージがリンパ節中に一般に見られます。リンパ節の細胞は感染に対する免疫反応を担っています。これは抗体産生と、抗体によらない感染防御を担う細胞性免疫の両方にかかわります。しかしながら、PCV2の単独感染によってリンパ細胞が影響を受け、マクロファージと体の免疫システムが破壊されるのかは分かっていません。メカニズムを解くには更なる研究が必要です。

 我々はワクチンが作られるのを長い間待っていました。キーポイントになるのは、もし複数のウイルスが発病因子として必要だった場合、何に対するワクチンが有効なのかということです。ついに、母豚に使用するPCV2のワクチンが暫定的にカナダで認証されました。これはフランスとドイツでも同様に暫定ライセンスの下で使用できるようになりました。

 この結果、母豚の免疫の増強と子豚への初乳抗体の高レベルでの付与により育成率の改善と死亡率の減少が認められました。カナダなどの初期段階で高リスクな地域にある農場では、このワクチンは急性の高死亡率の影響を抑えてくれる可能性があります。しかしながら、McKeown(Blacksburg, Virginia, Ames, Iowa) による最近の研究によると、高レベルの移行抗体でウイルス血症の発生が抑えられても、数週間後には同様の防御効果が得られないことが分かりました。

 このアメリカの調査はこの病気の急性と慢性の両方を観察したようです。急性相は抗体がない(もしくは少ない)状態における最初のウイルスの感染による発生です。慢性相はその後の、子豚が最初は移行抗体で守られて、その防御が少なくなってから感染が起こるものです。

 さらに、最近開発された若い育成子豚に接種する新しいPCV2ワクチンは野外実験でめざましい効果を示しました。ワクチン効果は育成から肥育期間を通じて与えられ、死亡率はPMWSのほぼ侵入以前まで抑えられました。これは3つの点でとても重要です。最初は、PCV2ワクチンの効果です。二番目は、この病気の発生が基本的にPCV2の感染によるということです。三番目に、子豚の免疫刺激(言い換えると子豚へのワクチン)は原因ウイルス(PCV2)がコントロールされたら重要ではなくなるという事です。
                                                  (Pig International June 2006 by David Burch)


 



PCV2-1
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