この本は米国の農業クラブに所属する青少年向けの、豚の共進会に出品するためのノウハウが書かれた本です。皆さんの中には「共進会なんか関係ない!」という方がいらっしゃるかもしれません。しかし、その前にどうして2004年の米国でこの本が出版されたのかについて少し考えてください。
日本で豚の共進会が行なわれなくなってすでに久しいですが、世界の先進国ではまだ行なわれている人気の農業イベントの一つです。養豚に関わる仕事している方は、アメリカの養豚というと大規模な企業養豚をイメージする事が多いと思います。しかし、実際はアメリカの養豚業界も日本と同様に、家族経営の小規模な農家によって支えられていて、まだまだ牧歌的な風景は守られているのです。
ヨーロッパから移民したアングロサクソン人たちは、新大陸のアメリカにそれぞれの母国から豚だけでなく、農業の文化も持ち込んだということを忘れてはいけません。世界の先進国から見ると、日本の農業は国内産業全体からみると地位はかなり低く、その中でも畜産に関しては歴史自体も浅いです。
私たちは諸外国から養豚の技術をどんどん取り入れ、世界に恥じない立派な設備と管理技術を確立しました。しかし、諸外国における豚を取り巻く文化について触れる機会は、実際とても少ないと思います。
農業大国でもあるアメリカでは、青少年を対象とした農業プロジェクトが盛んに行なわれ、その支援体制も充実しています。畜産を志す青少年には牛、馬、豚、羊など、好きな家畜を立派に育て、その素晴らしさを競い合うチャンスが与えられます。たとえ一匹といえども、心を込めて豚を育て上げるという事は、完成された最新の農場の実習と比べて決して見劣りする事ではありません。それどころか、このプロジェクトでは防疫や衛生管理、薬物の取り扱いにいたるまで、一般の豚肉生産者と同じ基準を厳密に守る事が要求されます。
この本は父と兄弟たち、そして息子の三代に渡って豚の共進会に参加し続けた、アメリカの伝統的な家庭で生きるDr.サンダースによって書かれました。彼が共進会に参加する若者に教えようとする言葉、そしてそれを吸収しようとする学生たちの姿、のびのびと育てられた愛嬌ある豚の姿を想像しながらこの本を読み進んでいただけると、この本に詰まった豚を取り巻く愛情と文化をきっと分かっていただけると思います。
少年たちが豚小屋の設計から頭を悩ませ、いかに安上がりに豚を手に入れるか、病気を防ぐにはどうすればいいか・・・、努力の後で迎える感動の共進会を少年たちと一緒に楽しんでください。紛れもなく、ここには農業を楽しむ文化があります。
下の写真は2005年の6月にデモインで行われたピッグショーの様子です。わずか数年間でショーの規模や参加者は急速に縮小しています。